Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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ゆうなぎとゆうかぜ

夕凪と夕風

寺田 寅彦

Lisez 夕凪と夕風 (ゆうなぎとゆうかぜ) de 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 227 caractères · 5 écrans

Aozora Bunko

その重苦しい何かしら凶事を予感させるような単調な音も、夕凪の夜の詩には割愛し難い象徴的景物である。

東京という土地には正常の意味での夕凪というものが存在しない。その代りに現れる夏の夕べの涼風は実に帝都随一の名物であると思われるのに、それを自慢する江戸子は少ないようである。東京で夕凪の起る日は大抵異常な天候の場合で、その意味で例外である。高知や広島で夕風が例外であると同様である。

どうして高知や瀬戸内海地方で夏の夕凪が著しく、東京で夏の夕風が発達しているか、その理由を明らかにしたいと思って十余年前にK君と共同で研究してみたことがあった。それには日本の沿岸の数箇所の測候所における毎日毎時の風の観測の結果を統計的に調べて、各地における風の日変化の特徴を検査してみたのである。その結果を綜合してみると、それらの各地の風は大体二つの因子の組合せによって成り立っていると見ることが出来る。その一つの因子というのは、季節季節でその地方一帯を支配している地方的季節風と名づくべきもので、これは一日中恒同なものと考える。第二の因子というのは海陸の対立によって規定され、従って一日二十四時間を週期として規則正しく週期的に変化する風でいわゆる海陸軟風に相当するものである。