Classiques japonais avec furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lisez 夜の靴 (よるのくつ) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 107 056 caractères · 213 écrans
私の部屋代については、参右衛門は一向に云おうとしないので、これには私たちも困った。何回私は部屋代を定めてくれと頼んでも、
「おれは金ほしくて貸したのではないからのう。ただでも良い。その代り、おれは貧乏だぜ、米のことと、野菜と、塩、醤油、味噌、このことだけは、一切云わないで貰いたい。それだけは、おれの家は知らん。お前たちにあげられるものは、薪と柴だけだ。これなら幾らでもあるで心配はさせん。」
参右衛門の云い方は、見ず知らずの者にははっきりしている。彼の家の横の空地、三間をへだてた路傍に、別家の久左衛門の家がある。このあばらやのような別家が、私たちに、ここの本家の参右衛門の一室を世話してくれた農家だが、これも通りすがりの私らに対しては、何んらそれ以上のするべき責任もない。しかし、部屋を世話したからは、困らせるようなことをおれはせん、と、久左衛門が、ふと小さな声でひと言云ったのを私の妻は覚えていた。
「そんなこと云ったのかい。」と私は笑った。
「ええ、ちょっと云ったわ。」
「じゃ、そのちょっとが、ここへ僕らをひきつけたわけだな。聞きぞこないじゃないのか。」
「でも、たしかに一寸いったようよ。