Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

Lisez 夜光虫 (やこうちゅう) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 66 871 caractères · 134 écrans

Aozora Bunko

手さぐりでもとの椅子に戻ると、小沢は濡れた服を寝巻に着更えると、眼を閉じた……。

外は相変らずの土砂降りだった。

何か焦躁の音のような、その雨の音が耳についてか、それとも……とにかく小沢はなかなか寝つかれず、いらいらしているとふっと、大きな溜息が寝台の方から聴えて来た。

娘もやはり寝つかれぬらしい。

そして、どれだけ時間がたった頃だろうか、娘はいきなり寝返りを打つと、声を掛けて来た。

「なんぜここへ来て寝ないの……?」

「えっ……?」

小沢は思わず眼をひらいて、寝台の方を見た。

暗がりで、よくは見えないが、たしかに娘はこちらの方へ顔を向けて寝ているらしい。

「…………」

娘は暫らく黙っていたが、やがてちょっとかすれた上ずった声で、

「小沢さんはあたしが嫌いなんでしょう?」

と、言った。

小沢の名を知っているのは、さっき宿帳に書く時、覗いていたからであろうが、それにしても、いきなり自分の名を云ったので、小沢はちょっと意外だった。

もっとも、この驚きには甘い喜びが、あえかにあった。

復員者の小沢は、久しく自分の名を「さん」づけで呼ばれたことはなかった、しかも若い女の口から……。