Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

Lisez 夜明け前 (よあけまえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 205 629 caractères · 408 écrans

Aozora Bunko

貧しい彼はそれほどの金をかつて見たこともなかったくらいだ。

寛斎は牡丹屋の二階にいた。その前へ来てすわって、手さげのついた煙草盆から一服吸いつけたのが安兵衛だ。

「先生に引き受けていただいて、わたしも安心しました。この役を引き受けていただきたいばかりに、わざわざ先生を神奈川へお誘いして来たようなものですよ。」

と安兵衛が白状した。

しかし、これは安兵衛に言われるまでもなかった。もとより寛斎も承知の上で来たことだ。

寛斎は前途百里の思いに胸のふさがる心地でたちあがった。迫り来る老年はもはやこの人の半身に上っていた。右の耳にはほとんど聴く力がなく、右の目の視る力も左のほどにはきかなかった。彼はその衰えたからだを起こして、最後の「隠れ家」にたどり着くための冒険に当たろうとした。その時、安兵衛は一人の宰領を彼のところへ連れて来た。

「先生、この人が一緒に行ってくれます。」

見ると、荷物を護って行くには屈強な男だ。千両箱の荷造りには嘉吉も来て手伝った。

四月十日ごろには、寛斎は朝早くしたくをはじめ、旅の落し差に身を堅めて、七か月のわびしい旅籠屋住居に別れて行こうとする人であった。