Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
あやかしのつづみ
夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓
夢野 久作
Lisez 夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓 (あやかしのつづみ) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 76 558 caractères · 153 écrans
私は身体中の毛穴が自然と引き緊まるように感じた。
私の先祖の音丸久能は如何にも鼓作りの名人であった。けれどもこの鼓を作り上げた時に自分が思っている以外の気もちがまじっているのに心づかなかった。
久能は云った。――私は恋にやぶれて生きた死骸になった心持ちだけをこの鼓に籠めた。私の淋しい空になった心持ちだけをこの鼓の音にあらわした。怨む心なぞは微塵もなかった――と……。
しかしそれはあやまっていた。
久能が自分の気持ちソックリに作ったというこの鼓の死んだような音色……その力なさ……陰気さの底には永劫に消えることのない怨みの響きが残っている。人間の力では打ち消す事の出来ない悲しい執念の情調がこもっている。それは恐らく久能自身にも心付かなかったであろう。無間地獄の底に堕ちながら死のうとして死に得ぬ魂魄のなげき……八万奈落の涯をさまよいつつ浮ぼうとして浮び得ぬ幽鬼の声……これが恋に破れたものの呪いの声でなくて何であろう。久能の無念の響きでなくて何であろう。
百年前の、ある月の、ある日、綾姫はこの鼓を打って、この音をきいた。そうして眼にも見えず耳にも止まり難い久能の心の奥の奥の呪いが、云い知れぬ深い怨みをこめてシミジミ自分の心に伝わって来るのを只独り感じたのであろう。