Classiques japonais avec furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lisez 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 254 021 caractères · 495 écrans
それは、往還の要衝たる渡頭のことですから、相当賑やかなのは当然のことですが、賑やかと物騒とは調子が違います。只ならぬ人間の犇めきが、今度はこちらの岸から起り始めたかのようです。白雲が、話題の鼻を折られていると、その前へ繰込んで来たのは、たしかに物騒な一行で、抜身の槍、突棒、刺叉というようなものを押立てた同勢が、その中へ高手小手に縛めた一人の者を取押えながら、引き立てて来たのであります。
二人は、押黙って、その光景を見ないわけにはゆきませんでした。
まず、真中に取りおさえられ、引き立てられている当人を見ると、それは、黒の羽二重の紋附を着て、髪は五分月代程度に生えて、色の白い、中肉中背の二十歳を幾つも出まいと思われる美男でした。それが着物は引裂け、朱鞘の大小をだらしなく差したまま、顔面にも、身体にも、多少の負傷をしながら、高手小手にいましめられて、引き立てられて来るのです。
そうして、この茶屋の前を素通りしてグングンと引き立てられ、渡頭の方へと引かれて行くのは、舟で向う岸へ運ばれて行くものと見える。
思いがけない兇状持ち、それを無言で見送った途端、田山白雲の頭に閃いたのは、さいぜんの乗合者の話――南部の家老の娘をそそのかして連れ出したという、美男の、色魔の、若侍の物語でありました。