Classiques japonais avec furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠2
中里 介山
Lisez 大菩薩峠2 (だいぼさつとうげ) de 中里 介山 (なかざとかいざん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 195 601 caractères · 387 écrans
それを避けながら、なんの気なしに馬の上を見るとその乗った人。
「あれ、あのお方は」
お君は眼の前を過ぎて行く馬を見送って、その乗っている人の後ろ姿を伸び上って見ました。黒い着物に黒い頭巾を被っていて、面の全部を認めるわけにはゆきませんでしたが、それでも通り過ぐる途端の印象で思い起したのは、伊勢の大湊の船大工与兵衛の宅で会った盲目の武士、幽霊のような冷たい人。
お君はこう思って馬上の人を見送っておりましたが、あの晩のことを考えると、今でもぞっと水をかけられるようで。今も眼の前を通ったのが、どうもこの世の人ではなくて、やっぱり幽霊が飛んで行ったように思われてなりません。
この時にムク犬は何を見たかキリリと尾を捲き上げて、三保の松原の方を向いて前足を揃えました。
「どうしたの、ムク」
その時、また同じく三保の松原の方から風を切って飛んで来る旅人。その旅人を見ると、ムクが一声吠えて飛びかかります。
「これ、どうしたんだね、人様に飛びかかって」
お君は身を以てムクの前に立ち塞がる。その隙を見て旅人は、燕のように急速力で駈け抜けてしまう。これはすなわち七兵衛。
ムクの力として、お君の抑えた手を振り切るのは雑作はあるまいが、それでも抑えられた手が主人の手と思ってか、身振いをしつつ七兵衛の駈けて行ったあとを睨んで立っていまし