Classiques japonais avec furigana
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てんのはいざい
天の配剤
菊池 寛
Lisez 天の配剤 (てんのはいざい) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 508 caractères · 5 écrans
月末まで、二十日あまりも、一文もなしに暮さねばならぬことを思うと、自分は悄気切ってしまった。
翌日は、日曜日だった。平素は早く起きる自分だったが、その日は起きる元気がなかった。十二時過ぎになってから漸く起き上った。自分は、起きると下へ行く梯子段に万朝報が置いてあるのを取り上げた。京都では東京の各新聞はちょうど一時頃に配達されるのだった。自分は、何気なく万朝報を取上げた。その日は、ちょうど日曜であった。自分が、ふと四面へ目をやると、そこに自分が二月も前に投書した、懸賞小説が当選して居るのだった。投書してから、一月位は当選するかするかと待って居たが、いくら待っても出ないので、もうスッカリ忘れて居たのである。
自分は、近き過去に於て、この時位嬉しいことはなかった。その時に得た懸賞金の十円位、有難く忝い金はなかった。自分は嬉しさの余り、思わず涙ぐんだほどだった。その時まで、自分は運命と云うものを、全体として悪意のあるものだと感じて居た。が、この時初めて馬琴の小説にあるように、天の配剤と云うことを感じた。摂理と云うようなことを感じた。自分は、その懸賞金を受取ると、盗難に逢った六円を補った残りで、晩秋の大和へつましい小旅行を企てたのであった。