Classiques japonais avec furigana
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てんぽうのひこうじゅつ
天保の飛行術
野村 胡堂
Lisez 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 024 caractères · 28 écrans
「他国者らしいが、生国は何処だ」
「江戸の生れで、清作と申します、ヘエ」
「何処へ行く積りだ」
「白山権現に心願の筋がございます。――実を申せば三年前に亡くなった父親が、若い時分に白山権現に願を掛けたそうで、その願ほどきもせずに居るのを悉く気に掛けて居りましたが、亡くなる時の遺言で、倅の私に三年の内に必ず父親に代って願ほどきのお礼詣りに、白山御前岳の権現様に行くようにと堅く申付けで御座いました、ヘエ」
清作は弁舌爽やかに申開きました。
「黙れ、黙れ、黙れッ」
「ヘエヘエ」
「それほど大事な山登りなら、それぞれの形がある筈だ、浄衣、金剛杖の用意があるか」
「それは、その」
「その扮でコソコソとお留山へ登ろうと言うのは、怪しい奴に相違あるまい、ひと詮議してやる、来い」
山役人が三人、左右から清作を引き立てるのです。
「どうぞ、御勘弁を」
「ならぬッ」
その騒ぎの真っ最中でした。
「まア、なんという騒ぎだろう、――清作も清作じゃないの、そんなところで芝居をしたって見てくれる人もありゃしないのに、ホ、ホ、まア、あの顔」
四方がカッと明るくなるような、滑らかな美しい声を掛けて、物蔭から押し出されたような横身に、スラリと山役人の前に立ったのは、茶店の女房が教えた――お通という、燃え立つような美しい半面を持った女でした。