Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

うしなわれたはんしん

失われた半身

豊島 与志雄

Lisez 失われた半身 (うしなわれたはんしん) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 545 caractères · 21 écrans

Aozora Bunko

その午後、おれは憂欝だった。何もかもつまらなかった。やたらに腹が立つが、おおっぴらに怒ることが出来ず、くよくよと我慢してる、そんな風の憂欝さだ。これは時々あることで、そう長く続くものではなく、せいぜい半日ぐらいで過ぎ去るのは、分っていた。然しこんどのは、どうも根深いように思われた。まさか、おれは躁欝病ではないし、その欝状態ではない筈だが、なにか病的なものが感ぜられた。アルコールがまだ体内に残っていて、微醺が意識されるのだったが、宿酔発散後に往々経験する、消耗性の虚脱感まで伴っていた。どうしたというのだろう。ばかばかしさに腹が立ち、それがじめじめと内攻して、泣きたいほど気がめいった。

会社のデスクにつっ伏すようにして、校正を見るふりをしながら誰とも口を利かなかった。

夕方、杉山さんが社に立寄った。おれの受持ちの執筆者だ。至ってのんびりした老学者で、気むずかしい小説家などとちがって、ひとの言葉なんか耳にとめないのはよいが、困ったことには、屋台店の焼酎を飲むのが好きだ。そのくせ、独りでは決して行かないから、誰かが案内しなければならない。編輯長は用があって行けなかったし、おれが、若干の金を貰ってお伴することになった。