Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 177 caractères · 22 écrans
ドカリと椅子に腰をおろした深沢深は、首を一と振り鬣のような長髪をかき上げて、いきなり象牙の鍵に指をおろしました。
単純な可愛らしい数小節が走ります。それは丁度メンデルスゾーンの結婚行進曲にも似た、他愛もない甘さを持ったものですが、やがて第二段に入ると、弔いの鐘のような、不吉な連打が低音部に起り、それが高音部の可愛らしい旋律を呑んで、青空に漲る夕立雲のように、曲全体をおどろおどろしきものにしてしまいました。
聴衆は固唾を呑みました。「こんな筈ではなかったが――」といった、予想外な気持と、いつ一と雷鳴来るかも知れない不思議な予感に脅えたのです。
曲は暫く可憐な明朗な第一主題と、不気味で単純な第二主題との絡み合いになりました。貪婪で執拗で薄黒くて不気味なくせに、不思議な媚を含んだ第二主題は、兎もすれば喘ぎ逃げ廻る第一主題を圧倒して、曲の第二段は終ります。
続いて起る第三段は、更に悪魔的で、そして獰猛でさえありました。不吉な単純な音の連打と、悪魔の息吹のような、不協和音の大氾濫といった方が宜いかもわかりません。それは、正に世界の最後の日のために用意された、悪魔の大軍が、人間の罪を鳴らすために地獄の底から吹き送る音楽と言った方が適切だったでしょう。