Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 713 caractères · 28 écrans
――死んでからまで芝居をしているのだ――と、後で係官の一人が不道徳な歎声を漏したほど、それは惨憺たる魅惑というか、命がけの観物というか、比類を絶してすさまじい一カットでした。
見事に伸び切った長身で、豊かな皮下脂肪――というと一向不思議はありませんが、美しい蔓草のような柔らかさと強靭さを持った四肢や、桃色真珠の色沢を持った皮膚は、さすがに死の色彩を一と刷毛加えて、やや蝋化された感じですが、寝具から抜出した上半身の美しさは、何にたとえるものがあるでしょう。
こんもり盛上った二つの乳房――その左の乳の下のあたりへ、白い薄絹の寝巻を通して、王冠形の柄の付いたぺーパーナイフが、呪われたものの真っ直ぐさで、ザブリと突っ立っているのです。
血はぺーパーナイフの突っ立ったあたりから、牡丹の花のように滲み出して、首から側腹に及んでおりますが、恋の技巧以外に、何んの取柄もなかった女――凡そ人間らしい温かい血などを持っていそうもなかった女からこんなに血の出ているのが、かえって不思議な位――それにしても、血を失った死体に残る不思議な妖女性の美しさは、この女の舞台を知っている者も、思わず感歎の声を漏らしたほどです。