Classiques japonais avec furigana
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おくじょうねんだけのぜってんにたつき
奥常念岳の絶巓に立つ記
小島 烏水
Lisez 奥常念岳の絶巓に立つ記 (おくじょうねんだけのぜってんにたつき) de 小島 烏水 (こじまうすい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 541 caractères · 11 écrans
わけである、しかも争う可らざるは朝の神秘なり、一たび臨むとき、木偶には魂を、大理石には血を与る。
いぎたなく眠れる善作を揺り起して、炊事を命じ、自分一人寒気に慄えながら小舎の前の石峰に立た。
再び言う、脚下は雲なりと、一望茫として、北氷洋が凝ったように雲は硬く結んでいる、東方甲斐の白峰を先頭とせる赤石山系のみは、水の中に潜んでもいるように藍を潮した、我が一脈の日本アルプスは、一旦五六岳辺から胴を波の中に没してしまったが、やがて立山となって首を躍出している、と見るとき、海の底から煥発した朱樺色の火が、一文字を曳て走った。
日は未だ昇らない、夜中に高かった銀の月は、槍ヶ岳と穂高山の中間に、淡くかかっている、その脚下の鉄壁の雪田のみが、やはり白い。
どこかで、タケガラスが啼いている。
朱樺の火は燃え出した、その明るくなることは、花が発くのと同じで、万象の色が真の瞬間に改まる、槍と穂高と、兀々した巉岩が、先ず浄い天火に洗われて容を改めた、自分の踏んでいる脚の下の石楠花や偃松や、白樺の稚いのが、今眠から醒めたというように朝風に身振いしてソヨソヨと顫った、天地皆新しい。