Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
こをうばう
子を奪う
豊島 与志雄
Lisez 子を奪う (こをうばう) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 292 caractères · 80 écrans
桜の花を渦巻きに散らしたメリンスの着物の下から、真赤な絹天の足袋がちょこちょこ動いて見えた。
家中の者が総がかりで、依子を退屈させまいとした。彼女の珍らしがる物はいくらもあった、床の間の香爐、兼子の手提袋、幾代の室の人形柵、庭の隅の桜や椿の花弁、空池の底の小石、玩具に倦きるとそんなものまで持ち出された。けれども晩になると、彼女は不思議そうに室の中を眺め廻した。皆からあやされてもいやに黙っていた。
「お母ちゃん!」と彼女は云った。
「え、なに? お母さまは此処に居ますよ」と兼子は云った。
「お母ちゃま」と依子は云った。それから頭を振った。
依子はどうしても寝間着へ着換えたがらなかった。幾代や兼子がいくらすかしても駄目だった。しまいには泣き出した。幾代はそれを抱いて、室の中をよいよいして歩いた。次には景子が代った。依子は何時までもじっと眼を見開いていた。兼子はそれを背中に負った。電気に蔽いをして室を暗くした。余り長く黙ってるので覗いてみると、依子はもう眠っていた。安らかにつぶった眼瞼の縁に、ぽつりと涙が一滴たまっていた。
幾代が抱いて寝ることになった。布団の上に寝かしても、依子はもう眼を覚さなかった。