Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
Lisez 孤島の鬼 (ことうのおに) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 181 795 caractères · 359 écrans
て歩いたものである。休日には郊外電車の駅で待合わせて、よく緑の武蔵野を散歩した。こう目をつむると、小川が見えて来る。土橋が見えて来る。鎮守の森とでも云う様な、高い老樹の樹立や、石垣が見えて来る。それらの景色の中を、二十五歳の子供子供した私が、派手な銘仙に、私の好きな岩絵具の色をした織物の帯を、高く結んだ初代と、肩を並べ歩いているのだ。幼いと笑って下さるな。これが私の初恋の最も楽しい思出なのだ。僅々八九ヶ月の間柄ではあったが、二人はもう決して離れることの出来ない関係になっていた。私は会社の勤めも、家庭のこともすっかり忘れてしまって、ただもう桃色の雲の中に、無我夢中で漂っていたのである。私は諸戸の求婚などはもう少しも恐れなかった。初代の変心を気遣う理由は少しもなかったからである。初代も今はたった一人の母親の叱責をさえ気にかけなかった。彼女は私以外の求婚に応ずる心など微塵もなかったからである。
私は今でも、あの当時の夢の様な楽しさを忘れることが出来ない。だが、それは本当に束の間の喜びであった。私達が最初口を利き合ってから丁度九ヶ月目、私ははっきりと覚えている、大正十四年の六月二十五日であった。