Classiques japonais avec furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lisez 家 (いえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 748 caractères · 254 écrans
「曾根さんが私のことを、『大変貴方は顔色が悪い』なんて……」
何となく家の内はガランとして来た。三吉夫婦は互に顔も見合せずに、黙って食卓に対うことすら有った。
むずかしい顔付をして考え込んでばかりいるような夫の様子は、お雪の小さな胸を苦しめた。この機嫌の取りにくい夫の言うことは、又、彼女に合点の行かないことが多かった。夫はお房が可愛くて成らないという風で、「この児の頬は俺の母親さんに彷彿だ」などと言っているかと思えば、突然にお雪に向ってこんなことを言出す。
「房ちゃんは真実に俺の児かねえ」
「馬鹿な……自分の児でなくて、そんなら誰の児です」
こういう馬鹿らしい問答ほど、お雪の気を傷めることは無かった。
「一体、お前はどういう積りで俺の家へ嫁いて来た……」
「どういう積りなんて、そんな無理なことを……」
「いっそ俺は旅にでも出て了おうかしらん――どうかすると、そういう気が起って来て仕方ない」
「まあ、どうしてそんな気に成るんでしょうねえ」
お雪はもう呆れて了う。「他所から帰って来ると、自分の家ほど好い処は無いなんて、よく言うじゃ有りませんか――真実に、貴方は気が変り易いんですねえ」