Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

てらさかきちえもんのとうぼう

寺坂吉右衛門の逃亡

直木 三十五

Lisez 寺坂吉右衛門の逃亡 (てらさかきちえもんのとうぼう) de 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 243 caractères · 19 écrans

Aozora Bunko

「父上」

主税が、こういうと、内蔵之助は、頷いただけで、すぐ、側の者に、指で、何か指図しながら、門の方へ歩いて行った。吉右衛門は

(これが一世の別れだのに、何んて、冷淡な――)

と、思った。

(自分の遊蕩は、人の倍もする癖に、主税の嫁さえとってやらずに――厳格な家庭で――家庭と、遊里とで、丸でちがった人になるように、この人の表面と、腹の中とは、全くちがうんだ。女は好きだが――いいや、女だって、祇園の妓に暇をやるのに、紙屑をすてるようだった。奥さんを、但馬へ帰すのも、今みたいだった。肚は、冷たい人なんだ。坊ちゃんが泣くのに父の情一つ見せないんだ。俺を、下郎扱いにする位、不思議じゃない)

寺坂は雪を泥溝の中へ蹴落しながら、逃亡するのに、いい機を考えていた。一人が梯子を伝って、屋根へ上った。梯子には、次々に人が伝って登りかけていた。門の所に、微かな音がして、木が軋ると、門内の白い雪が、くっきりと両扉の間に現れて、すぐ、広々とした玄関先が、展開した。人々は、静かに入って行った。一人が、玄関先の雪の中へ、竹に、書類を挟んだものを突立てた。

「お前、ここにおれ」

と、内蔵之助が、寺坂にいった。