Classiques japonais avec furigana
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しょうけい
小景
宮本 百合子
Lisez 小景 (しょうけい) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 323 caractères · 15 écrans
鮮やかな形のうちに清い渋みをたたえたライラック色の花弁は、水のように日を燦かすフレームの中で、無邪気な、やや憂いを帯びた蝶が、音を立てず群れ遊ぶように見えた。
飴緑色の半透明な茎を、根を埋めた水苔のもくもくした際から見あげると、宛然それ自身が南洋の繁茂した大樹林のように感じられた。
想像の豊かな若者なら、きっとその蔭に照る強い日の色、風の光、色彩の濃い熱帯の鳥の翼ばたきをまざまざと想うことが出来るに違いない。
そう思って見れば、これ等の瑞々しい紫丁香花色の花弁の上には敏感に、微に、遠い雲の流れがてりはえているようではないか。
私は、頭を一方に傾け我を忘れて佇んでいる青年のわきを、そっとすりぬけて街路に出た。
少し猫背の、古びた学生服の後姿を見て、誰が、あの軟かく溶け輝いて花の色を映していた二つの瞳を考えることが出来よう。
私は、ぼんやり飾窓の前に立って何かに眺め入っている自分やこの若者やの後姿が、行人の或る者にどんな印象を与えるか、よくわかっている。
自動車の厚い窓硝子の中から、ちらりと投げた視線に私の後姿を認めた富豪の愛らしい令嬢たちは、きっと、その刹那憐憫の交った軽侮を感じるだろう。