Classiques japonais avec furigana
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ろうじゅうのめがね
小笠原壱岐守
佐々木 味津三
Lisez 小笠原壱岐守 (ろうじゅうのめがね) de 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 57 249 caractères · 115 écrans
「どけっ。おまえなんぞ雑兵では手も出まい。おれが料る!」
掻き分けるようにして、直人が下駄ばきのまま、のっそりと前へ出ると、にっときいろく歯を剥いて言った。
「遺言はござらんか」
「ある。――きいておこう。名はなんというものじゃ」
「神代直人」
「なにっ。そうか! 直人か! さては頼まれたな!」
きいて、こやつ、と察しがついたか、一刀わしづかみにして立ちあがろうとしたのを、抜き払いざまにおそった直人の剣が早かった。
元より見事に、――と思ったのに、八人おそって、八人仕損じたことのない直人の剣が、どうしたことかゆらりと空に泳いだ。
しかし二の太刀はのがさなかった。立ちあがった右膝へ、スパリと這入って、益次郎は、よろめき乍らつんのめった。
それを合図のように、バタバタと、けたたましい足音が、梯子段を駈けあがった。
「あっ。隊長! 衛兵じゃ! 銃が来ましたぞっ」
急をしらせたとみえて、益次郎の従者が、銃口を揃え乍ら、縄のようにもつれて駈けあがって来たのである。
「来たか! あいつはちと困る! 早くにげい!」
仕止めの第三刀を斬りおろすひまもなかった。どっと、一斉に障子を蹴倒して、五人の者は、先を争い乍ら、裏屋根伝いに逃げ走った。