Classiques japonais avec furigana
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やまでらのかい
山寺の怪
田中 貢太郎
Lisez 山寺の怪 (やまでらのかい) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 147 caractères · 13 écrans
武士は老僧に詞をかけようと思った。左斜にこちらを見ている老僧は右の眼が開いて左の眼が潰れていた。武士はおかしくもあれば驚きもして見るともなしに小僧に眼をやった。右斜になっている小僧も右の眼が潰れていた。
「仏像も、和尚も、小僧も、隻眼とは何事だ、よくも揃ったものだ」
武士は驚いて仏壇の方を見た。仏壇の側には羅漢が立っていたがその羅漢像もそれぞれ一方の眼が潰れていた。武士はまた天井を見た。天井には群青や朱の色の重どろんだ絵具で天女と鳳凰を画いてあったが、その天女も鳳凰も同じように一方の眼が潰れていた。武士はまた右の方に眼をやった。そこには古い絵具の剥げかけた壁画があって、鶴や亀や雉子のようなものを画いてあったがそれも悉く一方の眼が潰れていた。左のほうの老僧と小僧のいる方の壁にも壁画があって、獅子や麒麟のようなものが画いてあったがそれも隻方の眼が潰れていた。武士はますます驚いたが強いて気を張って老僧を見た。
「ここは何と云う処かな」
老僧は蒼い悲しそうな顔を顫わすようにした。
「はい、はい、ここは隻眼山一目寺と云う寺でございます、ここは人の来る処ではありません、どうしてここへ来なされた」