Classiques japonais avec furigana
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いわなのかい
岩魚の怪
田中 貢太郎
Lisez 岩魚の怪 (いわなのかい) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 259 caractères · 9 écrans
「淵がでっかいけに、薬がきかないぞ」と、顔の大きな男が云った。
顎髯の男はまた皮粕を入れた。木の枝を持っていた何人かがそれを入れて、水の中を掻きまわした。一尺ばかりある岩魚が浮いて来た。
「や、出たぞ、出たぞ」と、皆がいっしょに云った。
しゃくい網を持った者は岩を伝って往って、下へ流れて往こうとする魚をしゃくいあげた。岩魚も三つ四つ浮いて来た。しゃくい網を持った男は、またそれをしゃくいにかかった。
と、四方が急に微暗くなって頭の上の木の葉がざざざと鳴りはじめた。大粒の雨の雫が水の上へぽつりぽつりと落ちて来た。青暗く沈んでいた淵の水が急に動きだしたかと思うと、白い大きな藍色の魚の背が見えて来た。人間の大人ほどある鬼魅悪い大きな岩魚が白い腹をかえしながら音もなく浮んだのであった。
雨は烈しくなって谷はますます暗くなっていた。
大岩魚はそのあたりの谷川にたまたまいることがあると云われているもので、頭から尻尾までが五尺ばかりもあった。人びとはその鰓へ藤葛をとおして二人がかりで担って来た。
その夜一行はその大岩魚を肴にして、その日の慰労をやると云うことになり、一行に加わっていた者の家を宿に頼んで魚の料理にかかった。