Classiques japonais avec furigana
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しまばらしんじゅう
島原心中
菊池 寛
Lisez 島原心中 (しまばらしんじゅう) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 293 caractères · 29 écrans
けれども、法律的にいえば、それは単に物の位置を移すということに過ぎないのです。
『よろしい』
僕は、そう苦り切って答えるほかはなかったのです。お主婦は、一人では怖いからといって、刑事に付いてもらって、死体の置いてある部屋の方へ行きました。
お主婦の姿を見送った僕の心は、憤懣とも悲しみとも、憂愁ともつかない、妙な重くるしい、そのくせ張り裂けるような感情で、いっぱいになっていたのです。
普通の人間が死んだ場合は、たとえ息は絶えていても、あたかも生あるもののごとくに、生前以上に尊敬され、待遇されるのに、彼女は――生前もがきにもがいた彼女は、嘖まれた上にも嘖まれた彼女は――息が絶えると同時に、物自体のように取り扱われ、身に付けていた最後の粉飾物を、生前彼女を苦しめ抜いた楼主に奪われなければならぬかと思うと、彼女の薄命に対する同情の涙が、僕の目の中に汪然と湧いて来るのを、どうすることもできなかったのです。
お主婦は、やがて指輪を抜いてきました。見ると、それは高々八、九円するかしないかの、十四金ぐらいの蒲鉾形の指輪なのです。僕はそのときむらむらとして、こんなことをいったのです。