Classiques japonais avec furigana
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あらし
嵐
島崎 藤村
Lisez 嵐 (あらし) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 54 007 caractères · 108 écrans
ているところで、ある見知らぬ婦人から思いがけなく声を掛けられたという話を持って帰って来た。
「どなたでございますか。」
「いやな次郎ちゃん、わたしを忘れちまったの?」
これは二人の人の挨拶のように聞こえるが、次郎は一人でそれを私たちにやって見せた。
「いやな次郎ちゃん――だとサ。」
と、また次郎が妹に、その婦人の口まねをして見せた。それを聞くと、末子はからだもろとも投げ出すような娘らしい声を出して、そこへ笑いころげた。
どうしてその婦人のことが、こんなに私たちの間にうわさに上ったかというに、十八年も前に亡くなった私の甥の一人の配偶で、私の子供たちから言えば母さんの友だちであったからで。かつみさんといって、あの甥の達者な時分には親しくした人だ。あの甥は土屋という家に嫁いだ私の実の姉の一人息子にあたっていて、年も私とは三つしか違わなかった。甥というよりは、弟に近かった。それに、次郎や末子の生まれた家と、土屋の甥のしばらく住んでいた家とは、歩いて通えるほど近い同じ隅田川のほとりにあったから、そんな関係から言っても以前にはよく往来した間がらである。次郎のちいさな時分には、かつみさんも母さんのところへよく遊びに来て、長火鉢のそばで話し込んだものである。