Classiques japonais avec furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lisez 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 365 120 caractères · 728 écrans
そうだ。雑賀屋のおせい様に、とうとうその悪い虫がついたのだ。そのわるい虫は、たとえ名だけでも、じぶんの良人となっている磯五であると思うと、お高は、恐怖のようなもののために、寒さを感じた。おせい様は、あの磯五に与えるために、旦那さまからそのお金を取り立てようとしているのだ。そのために、この旦那さまは、身も商道もほろぼされようとしている。おせい様が、人もあろうに磯五に、金をみつごうとしているばっかりにである。
お高は、けっして傍観するわけにはいかないと決心した。血走った眼が、若松屋惣七を見た。若松屋惣七は、行燈のほうへ首を傾けていた。風雨の音に、聞き入っているように見えた。
「あらしに、なりましたな」
「はい。ひどい吹き降りになりましてございます」
「もっともっと、ひどい吹き降りになろうもしれぬ」
「はい」
お高の顔は、不自然に、白くかわいていた。眼だけは、そこから夏の星ぞらでものぞいているように、これも不自然に、かがやいて見えていた。小さな口が、固い直線をつくっていた。どこにも、悲しい影も、苦しい影もなかった。女というより、美少年のようなお高に見えた。戦いぬこうというこころが、一時に彼女を、強く変えて見せていたのだ。