Classiques japonais avec furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lisez 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 365 120 caractères · 728 écrans
たとえ家出して、行方知れずになっておりましても――」
「ふん、そんなら、どういう気で、わたしとこういうことになったのだ。一時の気の迷いか」
「――」
「それみい。答えられまいが。お高――」惣七の声は、意地にふるえた。「わたしは、お前は離しはせぬぞ。この、見えぬ眼で、どこまでも追いかけるのだ」
おおっ! というように、お高が、おめいたようだった。去った良人への気がねに、全心身をあげて惣七に打ちこみ得なかったお高だ。惣七に対する愛恋に、自制に自制を加えてきていたのだ。
その垣も、惣七の朴訥な迫力のまえには、一たまりもなかった。そこには、ふたりの感情のほか、何もなかった。泣き叫ぶのと同時に、お高は、腰を上げていた。膝で畳を走って、つぎの秒間には、総身の重みを、惣七のふところに投げあたえていた。
こうして嗚咽とともに飛びこんで来たお高を、惣七は、父のごとく、ゆったりと受け取った。
お高は、しがみついて、惣七の襟に、顔をうずめた。おおっ、おおっと聞こえるお高の泣き声にもつれて惣七の声がしていた。
「泣け、泣け。泣いて、泣いて、泣きくたびれて、眠るのだ。なあ、何も心配することはないぞ。