Classiques japonais avec furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lisez 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 365 120 caractères · 728 écrans
若松屋惣七は、はじめて挨拶した瞬間から、この磯五からいい印象を受けていた。視力の不自由な人の感である。この男なら、高音の二百五十両の件を切り出しても、事情さえわかれば、取り立てを延ばしてもらえそうだ。それどころか、こっちの出ようによっては、無期延期というような話しあいも、むずかしくはなかろう――そう考えていたやさきである。
そう考えていたやさきに、この新しい磯五こそ、もと奥坊主組頭をつとめていた、お高の良人だと聞いて、若松屋惣七は、急に、たましいの全部をあげて、磯五を憎んだ。突っかかるような憎悪が咽喉につかえて、彼は、ことばが出なかったのだ。
無意識のうちに、左手がひだりへ伸びて、そっと畳をなでていた。武士のときの癖で、そこに、佩刀が置いてあるような気がしたのだ。刀を引きつけて、どうする気か? ――若松屋惣七は、急に手を引っこめた。同時に、爆発するように笑い上げていた。
笑っているうちに、磯五の顔が、うっすらと見えてきた。すると、なぜお高がこの男といっしょになったか、のみならず、二千両という金を着服されて逃げられたのちまでも、いまだに、いささかの恋情を残しているそのわけが、若松屋惣七にははっきりわかる気がした。