Classiques japonais avec furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lisez 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 365 120 caractères · 728 écrans
三人の男世帯へ夜が来た。
夕餉を済ますと、和漢洋の書籍が所狭く積んである奥の一間で、玄鶯院は新坊を寝かしにかかる。
「坊やのお乳母はどこへ行た、あの山越えて里へ行た。里のお土産に何もろた。でんでん太鼓に笙の笛――」
調子はずれの子もり歌が、薄暗い行燈の灯影に揺れる。
と、守人は、すでに幾人かの生血を知っている水心子正秀の作、帰雁の一刀を腰にぶち込んで、忍びやかに方来居を立ちいでようとした。
「えへん」
玄鶯院の咳払いだ。
「守人殿、今ごろからどこへ行かるる?」
守人は土間にすくんだきり、返事がない。
「そこもとの身にはある筋の眼が光っていることを、よもやお忘れではあるまいの。昨日今日とでも怪しき風体の者が、この界隈に出没するということじゃ。夜歩きには充分に気をつけたがよいぞ」
「御心配御無用。私には供がございます。帰雁と申す――」
戞然と鍔を鳴らして、守人は蒼白く笑った。
「さようか。それもよかろう。が、帰宅のほども知れまい。雨催いじゃ。守人殿、傘を持たれよ」
あとはまた子もり歌に変わって、
「西が曇れば雨となり、ひがし曇れば風となる。千石積んだる船でさえ、暴風雨となれば出てもどる」