Classiques japonais avec furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lisez 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 365 120 caractères · 728 écrans
井桁の内側にちょうど足場になるような具合に、ところどころ石が欠けて、引っかかりの穴ができている。それを伝わって、水面までおりた里好は、ためらうことなく、片足をざぶりと水の中へ突きおろした。ほんの踵ぐらいまでの水である。
水が濁っているので、昼間見てもちょっと深浅がわからないのだが、空の色や、井戸の上にのぞく木の梢を写して、どんよりとおどんでいるところ、上からのぞいた人は、まさかこんなに浅いとは気がつくまい。これでは井戸というよりも、盥の底に、洗足の水が捨て残っているようなもので、はいっても裾をぬらすに足らぬほどだ。
「おい」
井戸の底から里好が呼ぶ。お蔦も思い切って里好をまねて、井戸の内側へすべり込んだ。ぬるぬるとした苔の触感とともに、腐ったような水の香が、ぷんと鼻をつく。井戸の幅が狭いので、お蔦は手足を突っ張るようにして、そろそろとおりて行った。里好の両手がお蔦を抱いて、そっとその浅い水の中に立たせる。
「さあ、これからだ」
里好はこういって、ひときわ黒く苔のむしている眼の前の石を、ちょうど戸でもあけるように、力を入れて右へ引くと、――。
と、どうだ!