Classiques japonais avec furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lisez 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 365 120 caractères · 728 écrans
お戯言でございませんければ、どうぞわけを、お聞かせなすってくださりませ」
「ふん」若松屋惣七は、うそぶいているように見えた。
「だから、いまも申すとおり、人間は、えて身勝手なものである。お前のことは、忘れておったといってはすまんが、自分の用にかまけて、つい忘れておったぞ。どうだった! 磯屋さんと二度の念がかなって、お前もあのお店へ乗り込むことになったのではないのか」
若松屋惣七は、磯五のこぶしを面上に受けながら、お高のために証文を破った、あのけさのいきさつを根に持っているのではない。あれは、ゆきがかり上、若松屋惣七としてはああ出ざるを得なかったのだ。いわば、磯屋とのあいだの戦端開始の合図のようなものだったのだ。しかし、もとはといえば、お高から出たことだ。
が、いま若松屋のこころは、そのお高からも遠く離れてしまった。お高のみならず、磯五とのあいだにひそかに自分に誓った商道のあらそいすらも、すでに彼の興味を失いかけているのだ。そんな余裕も闘志も、なくなっているのだ。より以上に重大な、彼自身の死活に関する問題が、大きな手のように、若松屋惣七をわしづかみにしようとしている。