Classiques japonais avec furigana
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へいぼん
平凡・私は懐疑派だ
二葉亭 四迷
Lisez 平凡・私は懐疑派だ (へいぼん) de 二葉亭 四迷 (ふたばていしめい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 81 548 caractères · 161 écrans
もう羽織はなしで、紬だか銘仙だか、夫とも更と好い物だか、其も薩張分らなかったが、何しても半襟の掛った柔か物で、前垂を締めて居たようだった。障子を明けると、上目でチラと私の面を見て、一寸手を突いて辞儀をしてから、障子の影の膳を取上て、臆した体もなくスルスルと内へ入って来て、「どうもお待せ申しまして」、といいながら、狼狽している私の前へ据えた手先を見ると、華奢な蒼白い手で、薬指に燦と光っていたのは本物のゴールド、リングと見た。正可鍍金じゃ有るまい、飯櫃も運び込んでから、
「お湯はございますか知ら。」
と火鉢の薬鑵を一寸取って見て、
「まだ御座いますようですね。じゃ、お後にしましょう。御緩くりと……」
と会釈して、スッと起った所を見ると、スラリとした後姿だ。ああ、好い風だ、と思っている中に、もう部屋を出て了って、一寸小腰を屈めて、跡を閉めて、バタバタと廊下を行く。
別段異った事もない。小娘でないから、少しは物慣れた処もあったろうが、其は当然だ。風に一寸垢脱のした処が有ったかも知れぬが、夫とても浮気男の眼を惹く位の価値で大した女ではなかったのに、私は非常に感服して了った。