Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
まぼろしのかなた
幻の彼方
豊島 与志雄
Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans
彼女は本当に怒りだした。
「玩具じゃありませんよ。」
「だって触らしたっていいだろう。僕の……。」
僕の児じゃないか、と云おうとして彼は中途で言葉を切った。勿論彼の児には相違なかったけれど、それよりも寧ろ、天地自然の芽ぐみ……豊かだ……という気がした。その気持が彼を、胎児の側から、また秋子の側から、遠くへつき放してしまった。彼はくしゃくしゃなしかめ顔を、どういう風に和らげていいか分らなかった。
「あなたみたいに我儘では、お父さんになる資格はありません。」と秋子は云った。「も少し真面目に考えて下さらねば困るじゃありませんか。片山さんでも中野さんでも、奥さんが姙娠なさると、それは大切になすったものですよ。毎日卵を二つと蒲焼を食べさせなすったんですって。私そんなものを食べたくはないけれど、それくらい大事にして貰うと、ほんとに幸福だと思いますわ。あなたはまるで、私一人で勝手に姙娠したとでもいうような調子ですもの。」
然しそれは、順造に云わすれば、眼の置き所が違うからだった。彼にとって直接に大事なものは秋子だった。その秋子の腹の中に、何とも云えないものが――胎児とは分っているが、実感としては仄暗い力強い根深い不気味な、凡てを押しのけてむくむくと脹れてくる生命が――宿ってるのだ。