Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まぼろしのかなた

幻の彼方

豊島 与志雄

Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans

Aozora Bunko

凡てが寂寥のうちに落着いてきて、彼の世界へまとまりだした。その世界が吹き曝しだった。歯が一本抜け落ちた時、いくら口をきっと結んでも、何処からか冷たい風が喉元へ吹き込んでくる、そういう淋しさが彼の胸へ喰い込んでいった。

何を考えるともなくぼんやりして、室の中を片付けていると、戸棚の隅から、紙に包んだメリンスや羽二重の布が二三個出てきた。順一が生れて間もなく、親しい友から貰った祝着だった。貰ったままで忘れられてしまっていた。

彼は初めて眺めるような心地で、順一の顔を見守った。長い頭がいつしか円くなり、頬から口のあたりへまとまりが出来、額の皺がなくなって、ちらつく光の後を眼で追うようになっていた。頬にふっくらと肉がついていて、絹のようにすべすべした皮膚だった。

その顔を指先でつっつくと、すぐに口を持ってきて、あちらこちら探し廻った。きょとんとした顔付をしたり、妙な渋め顔をしたり、大きく口を開いて泣き立てたりした。小指の先をくわえさせると、生温い粘り気のある唇でちゅっちゅっと吸った。しまいには焦れだした。

「お可愛そうですよ、そんなにからかいなすっては。」