Classiques japonais avec furigana
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ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
Lisez 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) de 松本 泰 (まつもとたい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 52 797 caractères · 107 écrans
その間に坂口は台所へ行って、コップに水を汲んできた。
女は強か酒に酔っているらしかった。
坂口とビアトレスは互に顔を見合せたが、女は膝に怪我をしている様子なので、一先ず家の中へ扶け入れる事にした。
その物音に、エリスは二階から下りてきた。彼女は台所から馳上って来た女中にいろいろ指図を与えたあとで愛想よく坂口の方に手を差延べながら、
「よく来ました。さアどうぞこちらへお入り下さい」といってイソイソと玄関わきの居間へ導いた。
「あの女を助けてやったのは貴郎ですってね。本統にお若いのに感心です。怪我はしていないようですが、あの女は大分お酒を飲過ぎて苦しんでいますから、ちっと休ませてやりましょう」エリスは同情深い調子でいった。
紺サージの着物に、紅い柘榴石の頸飾りをした彼女のスッキリした姿は、どうしても五十を越したとは見えなかった。
薄い藤紫の覆布をかけた電燈の光が、柔く部屋の中に溢れている。霎時するとビアトレスが扉をあけて入ってきた。
「三階に空いた寝床がありますから、連れて行って寝かしてやりましたわ。服装は相当にちゃんとしているのね。あんなにお酒に酔ってどうしたのでしょう。