Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
Lisez 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) de 松本 泰 (まつもとたい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 52 797 caractères · 107 écrans
坂口は食事を済ませてから、コックス家を訪ねた。昨夜の女のことが気に掛っていた。それに置手紙をして、昨夜一晩帰って来なかった伯父のことを思うと、じっとして家にいることが出来なかった。
丁度十一時である。彼は女中の開けてくれた玄関を入った。ホールの突当りに在る書斎は開放しになって、そこから庭に続く石段の手摺や、緑色の芝生が見えていた。
書斎のベランダに置かれた鳥籠の中で、薄桃色と青とで彩色ったような鸚鵡が、日光を浴びながら羽ばたきをして、奇声を上げている。
窓わきに椅子を寄せて、頻りに編物をしていたビアトレスは坂口の姿を見ると、微笑ながら立ってきた。
「オヤ、誰かと思ったら貴郎なの、よくいらしってね。随分いい季節になったのね。貴郎はお好きでしょう」
「エエ、散歩には上等です」坂口は相手が笑いながらじっと視詰めているので、聊か固くなって答えた。
「戸外はいいでしょう。ほんとに男の方は羨しいわ。何処へでも自由に行けるのですもの」
「女だって、何処へでも自由に行けると思いますがね」
「アラ、そうはゆかないわ。でも母さんはよくお出掛けになるけれども」ビアトレスは冗談らしくそう云ったが、急に不安らしい顔付をして、何やら考込んで了った。