Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

こころのかわ

心の河

宮本 百合子

Lisez 心の河 (こころのかわ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 442 caractères · 37 écrans

Aozora Bunko

愕然としたように、保夫が眼を大きくして、さよの顔を視た。

「――馬鹿!」

彼は四辺の静寂な光を乱して、はげしく座布団の上に座りなおした。さよは、掌一杯冷汗を掻いた。彼女は、動悸が苦しく強く搏って、口をつむんでいられないようになった。「彼も同じことを思っていたのか。――そうでなくてどうしてあの意味深い馬鹿! が出よう。……自分達二人が一どきに、一緒に思えることは……互に――」

さよは、座に堪えなくなった。彼女は立って縁側に出た。外も暗い。心の中の通り暗い。彼女の前には、はびこったねばりづよい薄闇に、こんもり幾重にも茂り合った常磐木の樹立と、片よって一本、細い電柱があった。縁側に近い八つ手の滑らかな葉末が、部屋から溢れる赤みがかった光線で陰気に一部分照されている。上に、電柱が、斜に空間を貫き、これも光の工合と見え、片側ばかり異様に白っぽく気味わるい生き物のように抽(ぬき)んでている。

さよは、ひやひやになった指先で、幾度も無意識に自分の額を擦った。「この夜の裡にばかりもう百年も棲んでいるようだ」彼女は思った。「この永い、重い、苦しい夜は本当に明日あけるのだろうか……」