Classiques japonais avec furigana
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ただなおきょうぎょうじょうき
忠直卿行状記
菊池 寛
Lisez 忠直卿行状記 (ただなおきょうぎょうじょうき) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 23 602 caractères · 47 écrans
負けても傷が付かぬとなれば、仕儀によっては、負けても差支えがないわけとなる! 忠直は偽りの仕合にはもう飽いている。大坂表において手馴れた真槍をもって立ち向うほどに、そちも真槍をもって来い! 主と思うに及ばぬ。隙があらば遠慮いたさずに突け!」
忠直卿は上ずって、言葉の末が震えた。左太夫は色を変えた。左太夫の後に控えている小野田右近も、左太夫と同じく色を変えた。
が、見物席にいる家中の者は、忠直卿の心のうちを解するに苦しんだ。殿御狂気と怖気をふるうものが多かった。忠直卿は、これまでは癇癖こそあったが、平常、至極闊達であり、やや粗暴のきらいこそあったが、非道無残な振舞いは寸毫もなかったので、今日の忠直卿の振舞いを見て、家中の者が色を変じたのも無理ではなかった。
が、忠直卿が今日真槍を手にしたのは、左太夫、右近に対する消し難い憎しみから出たとはいえ、一つには自分の正真の腕前を知りたいという希望もあった。真槍で立ち向うならば、彼らも無下に負けはしまい、秘術を尽くして立ち向うに違いない。さすれば自分の真の力量も分かる。もしそのために、自分が手を負うことがあっても、偽りの勝利に狂喜しているよりも、どれほど気持がよいか知れぬと、心のうちで思った。