Classiques japonais avec furigana
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あしのうら
怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
蘭 郁二郎
Lisez 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) de 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 109 233 caractères · 223 écrans
の表札を発見した時は、もうその無意味な仕事の為に、心身ともに、泥のように疲れ果てていた。が、勿論、私はその門を叩こうとはしなかった。
そして尚も、飢えた野良犬のように、その垣の低い家の周りを、些細な物音をも聴きのがすまいと耳を欹てて、ぐるぐるぐるぐると廻っていた。
さっきから、たった一つの窓が、カーテン越しに、ぼーっと明るんでいるきりだった。おそらくネネはいるのであろう、しかし何の物音もしなかった。その馬鹿にされたような静けさが、余計私の神経を掻乱すのだ……。
と、突然、まったく突然、その家の洗面所と思われる方にすさまじい水道の奔る音が、あたりの静けさと、欹てた耳とに、数十倍に拡大されて、轟きわたった。途端に私は、巨大な「洗浄器」を錯覚して、よろよろッとその低い白く塗られた垣に靠れてしまった。その垣は霧のためにべっとりと湿っていた。そしてネネの肌のように水々しかった。私はそこへ、ガクッと頸を折ると、熱い頬を押しつけた、そして、犇とその濡れた垣を抱しめた……。と同時に、不思議にも込上るような微笑を感じて来た。
四辺、には厚い霧が、小雨のように降り灑いでいた。