Classiques japonais avec furigana
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きょうふのまぼろしへいだんいん
恐怖の幻兵団員
大倉 燁子
Lisez 恐怖の幻兵団員 (きょうふのまぼろしへいだんいん) de 大倉 燁子 (おおくらてるこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 784 caractères · 28 écrans
疑いの眼で見れば、誰も彼もみんな誓約書に署名したスパイのように見えまして、お互いがお互いに探り合うというようなことになってしまうのです。
一雄への命令は、云わずと知れた父の地位を利用して、さまざまの事を探ぐるのにあるのは火を見るより明らかで、つまり夫はスパイの任務を背負されて、帰還したわけなのでした。
一つ間違えば死だと夫は云います。いつ殺されるかわからないとも云いました。
死の影を背負った男、夫は絶えず死の恐怖と幻とに脅やかされつづけていて、ある時は生きていることの苦しさから自分の手で死を撰ぼうと決心したこともありました。
人影に脅え、物音にいろを失い、訪問客に身構えするような彼でした。ある夕方、電車の中で、大森林の中で会った女性そっくりの横顔を見てから、また一層憂鬱になり、苦悶はますますひどくなりました。
『彼女が内地に来ている、いずれ連絡があるだろう』と、錠前屋をよんで、自分の部屋の戸締りを厳重に直させたり、ピストルを磨いたり、恐ろしく神経質になって、ちょっとした音にもびくッと肩を震るわせます。押し売りが来ても、眼鏡の底から眼を光らせるような始末でした。