Classiques japonais avec furigana
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おんしゅうのかなたに
恩讐の彼方に
菊池 寛
Lisez 恩讐の彼方に (おんしゅうのかなたに) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 824 caractères · 46 écrans
「丈は高いか、低いか」と、実之助はたたみかけてきいた。
「それもしかとは、分かりませぬ。何様、洞窟の奥深くいられるゆえ、しかとは分かりませぬ」
「その者の俗名は、なんと申したか存ぜぬか」
「それも、とんと分かりませんが、お生れは越後の柏崎で、若い時に江戸へ出られたそうでござります」と、百姓は答えた。
ここまできいた実之助は、躍り上って欣んだ。彼が、江戸を立つ時に、親類の一人は、敵は越後柏崎の生れゆえ、故郷へ立ち回るかも計りがたい、越後は一入心を入れて探索せよという、注意を受けていたのであった。
実之助は、これぞ正しく宇佐八幡宮の神託なりと勇み立った。彼はその老僧の名と、山国谷に向う道をきくと、もはや八つ刻を過ぎていたにもかかわらず、必死の力を双脚に籠めて、敵の所在へと急いだ。その日の初更近く、樋田村に着いた実之助は、ただちに洞窟へ立ち向おうと思ったが、焦ってはならぬと思い返して、その夜は樋田駅の宿に焦慮の一夜を明かすと、翌日は早く起き出でて、軽装して樋田の刳貫へと向った。
刳貫の入口に着いた時、彼はそこに、石の砕片を運び出している石工に尋ねた。
「この洞窟の中に、了海といわるる御出家がおわすそうじゃが、それに相違ないか」