Classiques japonais avec furigana
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あくじゅうへん
悪獣篇
泉 鏡花
Lisez 悪獣篇 (あくじゅうへん) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 715 caractères · 73 écrans
「何をしているんだろう。もうしもうし浦島さん……じゃない、浦子さんだ。」
と破顔しつつ、帽のふちに手をかけて、伸び上るようにしたけれども、軒を離れそうにもせぬのであった。
「店ぐるみ総じまいにして、一箇々々袋へ入れたって、もう片が附く時分じゃないか。」
と呟くうちに真面目になった、銑太郎は我ながら、
「串戯じゃない、手間が取れる。どうしたんだろう、おかしいな。」
二
とは思ったが、歴々彼処に、何の異状なく彳んだのが見えるから、憂慮にも及ぶまい。念のために声を懸けて呼ぼうにも、この真昼間。見える処に連を置いて、おおいおおいも茶番らしい、殊に婦人ではあるし、と思う。
今にも来そうで、出向く気もせず。火のない巻莨を手にしたまま、同じ処に彳んで、じっと其方を。
何となくぼんやりして、ああ、家も、路も、寺も、竹藪を漏る蒼空ながら、地の底の世にもなりはせずや、連は浴衣の染色も、浅き紫陽花の花になって、小溝の暗に俤のみ。我はこのまま石になって、と気の遠くなった時、はっと足が出て、風が出て、婦人は軒を離れて出た。
小走りに急いで来る、青葉の中に寄る浪のはらはらと爪尖白く、濃い黒髪の房やかな双の鬢、浅葱の紐に結び果てず、海水帽を絞って被った、豊な頬に艶やかに靡いて、色の白いが薄化粧。