Classiques japonais avec furigana
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あくじゅうへん
悪獣篇
泉 鏡花
Lisez 悪獣篇 (あくじゅうへん) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 715 caractères · 73 écrans
二十
ここに、一つ目と二つ目の浜境、浪間の巌を裾に浸して、路傍に衝と高い、一座螺のごとき丘がある。
その頂へ、あけ方の目を血走らして、大息を吐いて彳んだのは、狭島に宿れる鳥山廉平。
例の縞の襯衣に、その綛の単衣を着て、紺の小倉の帯をぐるぐると巻きつけたが、じんじん端折りの空脛に、草履ばきで帽は冠らず。
昨日は折目も正しかったが、露にしおれて甲斐性が無さそう、高い処で投首して、太く草臥れた状が見えた。恐らく驚破といって跳ね起きて、別荘中、上を下へ騒いだ中に、襯衣を着けて一つ一つそのこはぜを掛けたくらい、落着いていたものは、この人物ばかりであろう。
それさえ、夜中から暁へ引出されたような、とり留めのないなり形、他の人々は思いやられる。
銑太郎、賢之助、女中の松、仲働、抱え車夫はいうまでもない。折から居合わせた賭博仲間の漁師も四五人、別荘を引ぷるって、八方へ手を分けて、急に姿の見えなくなった浦子を捜しに駈け廻る。今しがた路を挟んだ向う側の山の裾を、ちらちらと靄に点れて、松明の火の飛んだもそれよ。廉平がこの丘へ半ば攀じ上った頃、消えたか、隠れたか、やがて見えなくなった。