Classiques japonais avec furigana
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ばしゃ
愛の挨拶・馬車・純粋小説論
横光 利一
Lisez 愛の挨拶・馬車・純粋小説論 (ばしゃ) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 40 699 caractères · 78 écrans
ところが、そのうち一年たち二年たっても、花江は別に何とも異状がないので、もう一度他の医者に診断して貰うと、身体のどこ一点たりとも欠点のあるところはないという。しかし、花江の心は長い間の悲しみのために、もう喜ぶ術を失ってしまっているので、別に喜ばしいことだとも感じなく、そのまま浮世を捨てつづけて夢殿村の病人を看病したり、外界との使いをしたりして今にまでいたっているとのことだった。――由良はその話を聞くと、ひどく打たれて風景も見えないほどぼんやりしたまま黙っていたが、突然、ぷんぷんしながら、「それは親父が悪い。」とひと言いった。
「悪いですとも、あんまりうろたえたからですよ。しかし、それだからあの先生も気狂になったんでしょうが、悪いときには、全く悪く重なっていきますもんですからね。」
由良の感動した様子を見ると、信者はいままで一度も見せたことのなかったさも分別臭いおお大人のような顔つきをして、急に感慨深そうに小首を傾けるので、由良もむっとして、何を貴様が生意気なっという気になり、いきなりそこへ信者を突き飛ばそうとしたが、何も察せぬ信者のその泰然とした馬鹿顔を見ると、ふと、これもこちらの病気のせいにちがいないと気を沈めて、また由良は信者と並んで山面の平坦な道を何に食わぬ顔をして戻って来た。