Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

Lisez 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) de 室生 犀星 (むろうさいせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 116 728 caractères · 231 écrans

Aozora Bunko

春から秋へ、

墓石は、おのづからなる歴史を持つだらう。

風が吹くたびに、遠くの松脂の匂ひもする。

やがて、

私達も此処を立ち去るだらう。かりそめの散歩者をよそほつて。

信夫の姉の道子は、大森谷中にいた頃の私の家に現われると、縁側の椅子に先ず腰を下ろしてやすんでいた。どういうものか、私にはその椅子の上の彼女の姿だけしか、眼に印象づけられていなかった。一緒に食事をしたとか、むだ話をしたとかいう覚えがのこっていない、いつでも椅子の上に彼女はいるのである。それは女客で家に来る人で、縁側の椅子にたやすく腰をおろす人がいなかったせいもあった。痩身美貌の道子は東京から大森まで出掛けては、つかれやすかった為に私が椅子をすすめたのかも知れぬ。

谷中のこの家は湿気があって陰気だったが、当時、道子は不幸にも離婚後で、心にも、からだにも弱りが見え痛々しかった。夫という男は彼女を愛する余りに、その肌を噛むという話を聞いて、私はそれを受けるには繊弱すぎる彼女を、気の毒に想うた。だから別れて却って宜かったように思えた。信夫の処女詩集の題名が『愛する神の歌』と呼称されていたが、私はそれは信夫のこいびとの昌子のことだと思っていたが、実は姉道子への心やりであったかも知れぬし、昌子と道子をもろともに呼んで二人をかけた題意にも受けとれた。