Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あるおとこのしゅき

或る男の手記

豊島 与志雄

Lisez 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 43 279 caractères · 86 écrans

Aozora Bunko

時々辻褄の合わないことを云っては、それを自ら意識してる風もなく平気で、私の方へちらと黒目を向けるのだった。

黒目を向ける……とは変な云い方だけれど、実際彼女の眼には特長があった。私は初めて彼女に逢った時から、その眼に一寸興味を惹かれた。初めて逢ったと云っても、そう遠い前のことではない。今年の六月、一寸した用件のついでに、北海道を暫く旅して廻って、登別の温泉に泊った時、髪の結い方から服装から言葉遣いまで、女中というよりは寧ろ女学生といった風な二十歳ばかりの女が、私の許へ夕食の膳を運んできた。そしてお給仕をしながら、そういう場合のありふれた会話の間々に、彼女は私の方へちらちらと黒目を向けた。もっと詳しく云えば、両方の黒目が薄い上眼瞼に引きつけられて、恰も近視の人が額に物をかざして眺める時のような眼付、もしくは、若い女優が舞台の真中に立って空を仰ぐ時のような眼付、そういった風などこか不安な色っぽい眼付なのである。それでいて決して上目を使っているのではなく、真正面に私の方を見てるのだった。私がそれに注意を惹かれて捕えようとすれば、瞳にさっと細やかな光が揺れて、黒目は元の――普通の――位置に復してしまう。