Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おうぎの

扇野

山本 周五郎

Lisez 扇野 (おうぎの) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 33 727 caractères · 67 écrans

Aozora Bunko

「あたし三度もお礼を云って笑われちまったわ、ね、――」とおつるは膝で栄三郎のそばへ寄った、「生れてっから初めてよ、こんな気持、本当に初めて、嬉しいわ」

そして強く栄三郎の手を握った。

四半刻ばかりそんなふうにしているうち、おつるは急に立ちあがって「海を見にゆこう」と云いだした。栄三郎もすぐに立ち、そこの縁側から庭下駄をはいて、三尺ばかりの狭い庭を生垣に沿ってゆき、裏木戸をあけて外へ出た。

「断わらなくってもいいのか」

「あとであやまるからいいの」

おつるは「こっちです」と云って、暗い路次を足早にぬけていった。

夕凪ぎの時刻が過ぎて風が出ていた。どこをどうゆくのか栄三郎にはわからない、少し広い横丁には燈火が明るく、軒先に縁台などを出して、涼んでいる人たちの姿が見え、二人の歩いてゆく暗い裏道でも、浴衣がけで団扇を持った男女とすれちがったりした。――栄三郎にはおつるに訊きたいことがあった。彼は師の宗渓と遊んだ経験で、こういう世界の女は誰かの世話にならなくてはやってゆけない、ということを知っていた。売れっ妓は売れっ妓なりに、ただ座敷を稼ぐだけではやってゆけないような、巧みな仕組ができている。