Classiques japonais avec furigana
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ゆび
指
佐左木 俊郎
Lisez 指 (ゆび) de 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 262 caractères · 5 écrans
すっぽんの生血を取るのには、その首を出すのを待っていて、鋭利な刃物でそれを切るのだと教えられていたからであった。
彼女は電車の中での、自働扉に指を噛まれた男のことを思い出した。あの男の指のように、このすっぽんの首がぐしゃぐしゃに切断されるのだ。彼女はそれを考えると厭な気がした。
併し彼女は、右手に、鋭利な大型の木鋏を握って、すっぽんが首を出すのを待たなければならなかった。これだけは他人に頼むわけにはいかないような気がしたし、女中達へ命ずるのにも彼女は気がさした。彼女は秘密にこれを処理したかったのだ。
彼女の血液の衷の若さは、近頃ひどく涸れて来ていた。この血液の衷から渇いて行くものを補うために、彼女はいろいろなものを試みた。例えば「精壮」とか「トツカピン」とか。併し、そんなものでは間に合わないのだ。が、彼女は涸れるものを涸れるままに、渇きるものを渇きるままに快楽を忘れることは出来なかった。日常の生活の上ではなんの心配もいらない有閑階級の、没落の途上で想像を許された唯一の快楽のために、彼女は、すっぽんの首を切ってその生血を啜らねばならなかったのだ。
首を出した。