Classiques japonais avec furigana
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りゃくだつせられたるおとこ
掠奪せられたる男
豊島 与志雄
Lisez 掠奪せられたる男 (りゃくだつせられたるおとこ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 23 398 caractères · 48 écrans
それはかの乞食に出逢った晩から初った。
その乞食というのは汚いいざりであった。両袖をもぎ取った汚い黄色がかった浴衣地の襤褸を着て、その裾をまくった両足には、紺の股引らしいものをはいていた。両方の足の先は、軍隊用のゲートルみたいな布でぐるぐる巻いてあった。その両足をずるずる引きずりながら、草履をはめた両手と膝頭とで匐い廻っていた。頬骨の高く聳えた眉の濃い見るから悪党らしい顔の上には、茫々と伸びた頭髪が垂れ下っていた。背中に大きな雑嚢を一つ背負っていた。何がはいっているか、それは円く脹らんでいた。
もう夜はだいぶ更けていた。然し大勢の人が彼の後からぞろぞろついて歩いていた。「何だろう。――何処から来たんだろう。――巡査は咎めないのかしら。――今晩は何処で寝るつもりなんだろう。」――人々は口々に何か低く囁き合っていた。然しそう囁き合う人達の顔と乞食の姿とを等分に見比べながら、黙ってついて歩いてる人々の方がなお多かった。そのうちに酒屋の小僧らしい少年が一人居た。彼は謎の鍵を知ってでも居るかのように得意そうな顔をして、あたりの人々を顧みながら云った。「また来やがったな。