Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

Lisez 支倉事件 (はせくらじけん) de 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 204 697 caractères · 406 écrans

Aozora Bunko

「その御心配は御無用です。私はお金など要りませぬ。あなたこそ御入用でしょう。どうぞそのまゝお持ち下さいまし」

「いゝや」

支倉は妻が金などは要らぬと云うのを押し止めながら、

「わしにはもう金などは不要なのだ。そうだ、誠お前がいらないのなら、せめて死んだ貞の為に墓でも建てゝやって呉れ」

「おゝ、ほんにそうでございました。そう云う思し召なら頂戴いたしましょう。私は少しも欲しくありませんが、仰せの通り死んだ貞の墓を建てゝ、後懇に弔ってやりましょう」

「あゝ――っ」

支倉はとう/\男泣きに泣き崩れた。

「あゝ、わしはもう何にもいらぬ。もう何も思い残す所はない。署長さんの手許にある金は全部お前に遣るから、後々の事を宜しく頼むぞ」

一座は一種云うべからざる圧迫を感じた。

戸外では罪ある者も罪なき者も折柄の春光を浴びて、嬉々として自由に足どり軽く歩き廻っている。

然るにこの狭苦しい冷たい一室では、夫は恐ろしい罪名の許に背後に縛の縄を打たれて、悔悟の涙に咽び、妻は褥さえない板敷に膝を揃えて坐ったまゝ、不遇な運命に泣いているのだ。免るべからざる人間生活の裏面にまざ/\と直面して、誰か何の感動を受ける事なしにこの有様を見る事が出来ようか。