Classiques japonais avec furigana
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やみのしらが
文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
沼田 一雅
Lisez 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会 (やみのしらが) de 沼田 一雅 (ぬまたいちが) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 076 caractères · 11 écrans
頃、急にその男が便通を催したので、枕許の手燭へ燈をつけて、例の細い濡椽を伝って便所へ行った、闇夜の事なので庭の樹立等もあまりよく見えない、勿論最早夜も更け渡っているので四辺はシーンと静かである、持って来た手燭は便所の外に置いて、内へ入った、便所の内というのも、例の上方式の前に円窓があって、それに簾が懸っている、蹲踞んでいながら寝むいので何を考えるでもなく、うとうととしていると何だか急にゾーッと悪寒を覚えたので思わず窓の簾越に庭の方を見るとハット吃驚した、外の椽側に置いた手燭の燈が暗い庭を斜に照らしているその木犀の樹の傍に洗晒しの浴衣を着た一人の老婆が立っていたのだ、顔色は真蒼で頬は瘠け、眼は窪み、白髪交りの髪は乱れているまで判然見える、だがその男にはついぞ見覚えがなかった、浴衣の模様もよく見えたが、その時は不思議にも口はきけず、そこそこに出て手も洗わずに母家の方へ来て寝た、しかし床へ入っても中々寝られないが彼はそれまでこんな事はあんまり信じなかったので、或は近所の瘋癲老婆が裏木戸からでも庭へ入って来ていたのではないかと思ってそれなりに寝てしまった。