Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

だんがいのさっかく

断崖の錯覚

黒木 舜平

Lisez 断崖の錯覚 (だんがいのさっかく) de 黒木 舜平 (くろきしゅんぺい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 483 caractères · 26 écrans

Aozora Bunko

一杯のんで、すでに酔った。二杯のんで、さらに酔った。三杯のんで、心から愉快になった。ちっとも気持がわるいことはないのである。断髪の少女が、今夜は私の傍につききりであった。いよいよ、気持がわるい筈はないのである。私の不幸な生涯を通じて、このときほど仕合せなことはいちどもなかった。けれども私は、その少女と、あまり口数多く語らなかった。いや、語れなかった。

「君の名は、なんて言うの?」

「私、雪。」

「雪、いい名だ。」

それからまた三十分も私たちは黙っていた。ああ、黙っていても少女が私から離れぬのだ。沈黙のうちに瞳が物語るこのよろこび。私が昨夜書いた「初恋の記」にも、こんな描写がたくさんたくさんあったのだ。夜がふけるとともにお客がぽつぽつ見えはじめた。やはり雪は、私の傍を離れなかったけれど、他のお客に対する私の敵意が、私をすこし饒舌にした。場のにぎやかな空気が私を浮き浮きさせたからでもあったろう。

「君、僕の昨日のとこね、あれ、君、僕を馬鹿だと思ったろう。」

「いいえ。」雪は頬を両手でおさえて微笑んだ。「しゃれてると思ったわ。」

「しゃれてる? そうか。おい、君、ウイスキイもう一杯。